毎年毎年ある女性のイベント好きのせいで入江家の誕生日はとても盛大に行われる。 そして今日は入江直樹の若奥様、入江琴子の誕生日である。 幸せ者のワガママは・・・ 彼女の旦那様である入江直樹は今日の今までとてもうっとうしそうにしていた。 何しろ彼の母がしつこかったからであった。 「お兄ちゃん!今年こそはちゃーんとしたプレゼントを琴子ちゃんにあげるのよ!」 「はぁ?」 「だって、お兄ちゃんたらなかなか琴子ちゃんにプレゼントとかしないでしょ?」 「んなの当人同士の勝手だろ?!」 「んまーっ! なんて冷たいのお兄ちゃん! 琴子ちゃんの誕生日なのに喜ばせようとは思わないの? 愛する奥さんの誕生日なのよ?! だーいじな日じゃない!!」 そんな問答が一週間近く続いていた。 しかも一日一回どころじゃない。 顔を合わせればほぼ毎回。 これなら彼じゃなくてもうっとうしいと思っても仕方ない。 確かに彼も今までまともなプレゼントを彼女にしたことはない。 しかも正直全然色気の無い試験の家庭教師。 しかし彼が自分からはじめて決めた彼女への誕生日プレゼントには間違いない。 クリスマスは彼の母が勝手に写真だとかなんだとかでまあ用意して無かったのだから必然的にそうなった。 そういうこともあって彼は彼女へのプレゼントを考えるのに妥当な物は出てくるはずもない。 ただ彼女のことだから多分何でも良いとか言いそうな感じでもある。 そして当日のこと。 「琴子ちゃん、誕生日おめでとー! はい!今年のプレゼント!私とパパからね。」 「わぁ、ありがとうございますー!!」 「早く子供作ってあげてね!」 「・・・!!」 中から出てきたのは男の子でも女の子でも兼用して使えるベビー用品。 男女兼用ってところが二人の意見の食い違いを表してるようにも見える。 「ほら、琴子。」 「裕樹君もありが・・・・算数の教科書ですって?! ば、ばかにしてー!!」 「怒るなよ、子供と一緒に勉強しろよ。 お兄ちゃん似の子供生めよ。」 「うぅ・・・・。」 「琴子、ほらよ、父さんからだ。」 「わっ・・・・!これ、子供用の服がたくさん!!」 「早く孫見せてくれよ。」 「う・・・・・うん。」 皆どこかしら既に子供の事を優先してるような感じである。 「あら?お兄ちゃんは?」 「さあ・・・。」 「もーっ!じれったいんだからお兄ちゃんったら!!! 琴子ちゃん、探してらっしゃいな。」 「え、あ、はい!」 と言っても探すほどもない距離に人影があった。 今日の主役である琴子の旦那様である。 パタパタ走って来る琴子の音に聞きなれてるのか違わずに名前を呼んだ。 「琴子。」 「あ、入江君!!」 「誕生日おめでとう、年取ったな。」 「むっ・・・・!失礼なっ! 入江君と変わらないもん!!」 「そうだな、女とは思えないくらいの体だしな。」 「〜っ!!イジワルイジワル!! そんなことないもん!」 「まーまー、お前にもともとそんな大層な身体は求めてねーよ。」 「ば、ばかにしないでよね!! これでもまだ成長するんだから!」 「このオレが“手伝って”やってるんだからな。 ・・・でももう年だしな・・・。」 「まだ20代だもん!」 「まだ若奥様だもんな。」 「そーよっ!」 いつもと同じ口喧嘩。 それすらも日常で微笑ましい二人。 「で、何が欲しい?」 「へ?」 彼がそんなことを言うなんて想像してなかった琴子は戸惑う。 それもそのはず、今までそんな事言われたことなかったから。 「誕生日なんだろ? 時にはワガママ聞いてやらないこともないし。」 「え、でも・・・。」 「まあ、お前にはいつも振り回されてばかりだし、全然必要無い気もするんだけどな。」 「うう・・・・・。」 「だから、いらないよな?」 「い、いります いります!!」 「んじゃ早く言えよ。何でもいいから。」 「え、えーっと、えーっと・・・。」 「・・・・。」 「うーん・・旅行も良いし、食事もいいなー。 デートも最近してないしー・・・・。」 「お前は相変わらず口で言わないと決められないのか?」 「えっ・・・・う・・・・・。」 考えてることを口で言うのは今に始まったことじゃない。 琴子が入江家に来てからそんな姿は何度も見た。 見るたびに間抜けで面白いバカな奴と言う印象が残っていた。 「ほら、早くしろよ。いーち、にーい・・・」 「まままま、待って!!決めたから!」 「何?」 「あ、あのね、あのね、えっと・・・。」 「ん?」 あのねあのね攻撃は聞き飽きてる。 でも結婚してからそんな琴子をかわいいと思えた。 言いだしづらく恥ずかしそうにしている。 「・・・・キスして・・・。」 「なんだって?」 「だ、だから、キスしてって!!!」 「・・・・・・・・・ぷっ・・・・。」 キスなんていつもしてるじゃないか。 でも琴子の考える事は意外とすんなり単純なのだ。 もっと特別な事を言うかと思えば日常となったものを要求する。 「え?私なんかおかしかった?」 「いや・・・ま、いいか。」 「?」 「ほら、こっち向けよ。」 「入江く・・・・。」 彼の大きな手が琴子を包む。 他の誰にも見せない琴子だけへの顔。 琴子にとってはそれが一番の彼からのプレゼント。 もちろんその様子は背後でしっかりと母達に見られていたとか。 もちろん、それは彼には気付かれているわけだけど。 「お前って・・・。」 「?」 「いや、幸せなやつだよな。」色んな意味で 「?うん、でもそれってバカにしてる?」 「誉めてるよ、多分。」 「多分?」 幸せなんて人それぞれ、彼女はただ常日頃が彼といることで幸せなのだということ。 *後書き* 文章力無いんで駄文失礼; ただ琴子の意識したワガママってきっとちっぽけな物なんだろうなーと思って書きました。 無意識の琴子のが最強なんですよ。 入江君は基本的優勢だけど無意識琴子の前では振り回されてるといいなーとかね。 結婚した後はそうだといいなーとか思いました。 ちなみにストーリー上、結婚して初めての琴子の誕生日の話です。 入江君からのプレゼントが無いのはやっぱりこの後指輪プレゼントなイベントの誕生日があるわけですから!! Back |